UUUM所属のユーチューバーが次々と脱退している理由

UUUM所属のユーチューバーが次々と脱退している理由

昨年度から続いていた、UUUMに所属するユーチューバーの方々の独立(脱退)が今年に入り加速しています。また同時に芸能人のユーチューバー進出がかなりのペースで増えており、日本のユーチューブ業界が大きく変わろうとしています。

今回の記事では、なぜ今UUUM所属のユーチューバーが続々と脱退しているのか?について、過去ユーチューバーマネジメント会社に在籍していた私の経験を踏まえて解説していきたいと思います。

マネジメント機能の欠如

結論から書きますと、「現状のユーチューバー事務所にはマネジメント機能がほとんど存在しないから」というのが私が考える理由です。

ここでいうマネジメント機能とは、タレントのスケジューリング調整などを指しているのではなく、「所属ユーチューバーをどういう方向で育てていくか」「ゆーチューブ以外での活躍の場をどう作っていくか」という点です。

そもそもユーチューバーが事務所に所属するメリットはなんでしょうか?

「広告案件を流してくれる事」

「所属ユーチューバー間でのコラボ動画を制作できる(可能性がある)事」

この上記2つです。それ以外のメリットを感じる人もいるでしょうが、大抵のユーチューバーにとってはこの2つが事務所に所属する理由になります。

逆に言うと、これらのメリットが事務所に所属しても手に入らなかったり、そもそも必要がなくなった段階で事務所から離れるという訳です。

大手のユーチューバー事務所であれば広告案件はある程度常に回っていますから、登録者数が一定数以上あればおこぼれに預かる事はできるかと思います。

問題は自身の登録者数が増え、受注できる案件数が増加していくと、企業側から直接案件の相談を受けるようになる事です。吉本の問題で有名になった「闇営業(直営業)」ですね。

ここで本来の案件の単価を知ってしまうと、「今までどれだけ事務所に中抜きされていたんだろう」という不満が確実に発生します。

また、他の事務所に所属するユーチューバーから案件単価をヒアリングして現状に不満を覚えるようになる、というケースも少なくありません。

一概には言えませんが、案件売上における事務所のマージンはおよそ20%〜50%です。「50%も取るのか!」と驚かれる人もいると思いますが、そういったケースも事実あります。

20%程度であれば一般的な広告代理店のマージンと同じなのである程度納得はできます。しかし、相手は広告代理店ではなく事務所です。であれば、マージンを取った分はもっと自分に対するマネジメントをきちんと行って欲しいと考えるユーチューバーがほとんどのはずです。

とても残念な事ですが、そのマネジメント機能が今のユーチューバー事務所にはほとんどありません。これは、「なぜユーチューバー事務所が大手以外にもこんなに溢れているのか」を考えれば答えが出ます。

現在、ユーチューバーやライバー、インスタグラマーなど様々なインフルエンサー事務所が多く存在します。それは「儲かるから」以外にありません。もっと具体的に言うと、「経費があまりかからないから儲かる」という事です。

彼らインフルエンサーは、ほぼ毎日自発的にコンテンツを制作しています。そうでなければ登録者数・フォロワーが増えないからです。つまり、事務所側からすれば「放っておいても魅力的なコンテンツを自分で用意してくれる」のでそこをサポートする人材リソースを用意しなくて良いという考えになるのですね。

また、仮に人材リソースを増やすとしても、「素材の良い素人を人気ユーチューバーに育て上げた」という経験のある人材など、ほぼ居ません。居るとすればそれは人気ユーチューバー自身が過去の経験を活かしてプロデュースを行うという形であり、事務所側でできる対応はやはりほとんど無い、と言えます。

つまりどちらにせよ、現在のユーチューバー事務所にはユーチューバーをマネジメントする機能がありません。案件は自分で取れるけど事務所を通さなければならない。その案件は必ず事務所のマージンが発生し、そのマージンは決して安いものでは無い。にも関わらず、自分自身をマネジメントしてくれる人材はほぼ居ない。これでは、有名ユーチューバーであればあるほど、事務所に所属する意味が無いと判断するのが当然ではないでしょうか。

これは何もUUUMに限った話ではなく、ほぼ全ての事務所に言える事だと言えます。むしろUUUMは業界の中で最も事務所としてきちんとしているので、そのUUUMでも流出を止められないというのが現状のユーチューバー業界です。

吉本との業務提携は何をもたらすのか

そんなUUUMが吉本興業との業務提携を発表しましたが、私はこの業務提携が今のユーチューバー業界に大きな変化をもたらす事は無く、今までと何も変わらないと考えています。

UUUMからすれば、所属ユーチューバーのテレビ露出が増える事や、吉本タレントとのコラボなどにより、今まで接点が無かった潜在ファンを獲得できると考えているかもしれません。また、テレビ露出というユーチューブ以外の場所を作った事で所属タレントのモチベーションアップに繋げるという意味合いもあるでしょう。

ですが、そもそも今テレビがユーチューバーを積極的に出すのは「ユーチューバーは数字が取れる」と考えているからであり、今テレビに出れるほど人気のあるユーチューバーが今後も大きく登録者数を増やすのは現実的ではありません。テレビに出たからといって彼らの登録者数が急増する事は期待できないでしょう。

「テレビに出たい」というニーズや「芸能人とコラボしたい」というニーズはユーチューバーの多くに確かに存在します。ですが、その芸能人も今では吉本に限らず他事務所でも積極的にユーチューブを活用するようになっています。テレビでしか会えない「憧れの人」が自身のフィールドに入ってきてくれている現状では、テレビに対するモチベーションもそこまで高くないのではないでしょうか。

結果、多少の認知増を獲得し、既存の人気ユーチューバーの広告単価を上げるという部分以外に今回の業務提携での変化は無いはずです。事実、業務提携発表後のUUUMの株価はあまり冴えず、市場関係者は冷静に判断していました。

今後のユーチューブ業界はどうなる

以上の内容を踏まえて、では今後ユーチューバー業界はどうなっていくのか?を考えていきたいと思います。

まずユーチューバー事務所についてですが、こちらは終始お伝えしている通り厳しいと思います。今後も所属ユーチューバーの流出は止まらないでしょうし、新しくユーチューバーを育成する機能も無いので、IP商品の開発などで単価を上げる以外に売上を上げる手法がありません。

一方、人気ユーチューバーが自身でユーチューバー事務所を設立するパターンというのは今後ありえると思います。既存の事務所と異なり、マネジメントを行える事から、一定の登録者数までは行ったんだけど伸び悩んでいる、というユーチューバーにとっては大きなメリットでしょう。

別の角度から考えると、広告案件やイベントなどスポット的な要望に応えながらも基本的にはフリーでやりたい、というユーチューバーとエージェント契約をする代理店もニーズがあると思います。全てのユーチューバーが自ら企業と交渉できる訳ではありませんし、ビジネス経験がある訳でもありません。事務所という選択肢が無い以上、こうした受け皿はユーチューバーが今後も増えていくにつれ需要も高まっていくと考えます。ユーチューバーをIPとした商品開発などで効果的な座組みではないでしょうか。

ユーチューバーへの注目度は年々増加していますが、まだまだ土台は出来上がっていません。彼らが今感じている事務所に対する不満をどう解決していくか、または今までにない提案ができるか。ビジネスとしては引き続き興味深いジャンルとして注視していきたいと思います。

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